ヒトiPS細胞由来腎臓オルガノイドによる遺伝性腎疾患(NPHP1欠損ネフロン癆)の研究
文責 須佐紘一郎 Koichiro Susa 蘇原映誠 Eisei Sohara
ES細胞やiPS細胞を分化誘導して人工的に作製したミニチュア腎臓である腎臓オルガノイドを使用し、ネフロン癆の病態解明と治療法開発研究を行っている。
腎臓オルガノイドは径1mm弱の細胞塊内部に糸球体から尿細管まで連続したネフロン様構造を三次元で有し、in vitroでありながら成熟腎臓に近い現象を観察することができる優れたモデルである。その用途の一つとして遺伝性腎疾患の再現が挙げられ、我々は治療法が存在しない遺伝性腎疾患の一つであるネフロン癆に着目した。
ネフロン癆は小児期末期腎不全の原因として最多(5~10%)の厚生労働省指定難病である。そして、近年の次世代シークエンサーを使用した遺伝子診断の進歩により、小児だけでなく成人の慢性腎臓病においても従来の想定よりかなり多くの患者が存在することが判明しつつある。その原因遺伝子として最も多いのがNPHP1であるが、病態を忠実に再現できる優れた動物モデルが難しいという問題があった。しかし、ヒトの細胞で作製した腎臓オルガノイドならば、その問題を解決することができる。そこで我々はCRISPR-Cas9システムにより実際のヒト症例と同じNPHP1欠損iPS細胞を作製し、そこから腎臓オルガノイドを分化誘導して、病態を再現可能なモデルの作製に成功した。
現在は、このネフロン癆腎臓オルガノイドを使用して治療法の開発に取り組んでおり、有望な知見も得られている。まだ治療法が存在しないネフロン癆の患者さんたちに、治療薬を少しでも早く届けることが我々の目標である。