メッセージ

森 崇寧

もり たかやす

(2005年卒)

東京科学大学 血液浄化療法部 講師

厳しくも温かいご指導に導かれて:内田信一先生への感謝の辞

内田信一先生、ご退官誠におめでとうございます。

先生との出会いは、2010年4月、私が大学院に入学した時に遡ります。

最初の訓示で「土曜日とか無いから。カンファも普通にやる」という、現在の働き方改革の世にあっては様々なコードに抵触しそうな衝撃的なお言葉をいただき、「来る場所を間違えた!?」と戦慄したことが昨日のことのように思い出されます。質問に伺うのも恐れ多く、右も左もわからぬまま、先生に渡された「今後の方針」というメモ紙一枚を頼りに実験に明け暮れ、結果として5kgのダイエットに成功した日々も、今となっては懐かしい思い出です。しかし振り返れば、そのメモ紙一枚には研究プロジェクトの全てのエッセンスが凝縮されており、内田先生の凄さを目の当たりにした瞬間でした。

数あるエピソードの中でも、特に鮮烈に記憶に残っているのは、私が大学院3年生の時のことです。次世代シーケンス(NGS)技術が登場した際、まだ卒論も通っていない私に、当時教授であられた佐々木成先生とともに国立遺伝学研究所(三島)への出向という身に余る機会を与えてくださいました。さらに驚いたのは、先方への挨拶に際し、先生が「俺も一緒に行くから」とおっしゃったことです。

当時の私は、先生との丸一日におよぶ「ふたり旅」に極度に緊張し、移動中の会話が途切れ気まずくならぬよう、研究トピックスから時事、ゴシップネタに至るまであらゆる引き出しを用意して臨みました。しかし、どの話題を振っても「ああ、そう」の一言で終わってしまい、車中で肝を冷やし続けたことは忘れられません。

現地では、遺伝研の井ノ上逸朗教授や細道一善先生(現東京薬科大学教授)らとの会食にも快くお付き合いいただき、また私の家庭事情を勘案して、単身赴任ではなく新幹線通勤をご提案くださったこと、そしてそのための高額な定期券代をご支援いただいたことには、感謝の言葉もございません。その後、米国ワシントン大学への留学機会までいただき、これら全ての経験が、現在の私の研究活動の礎となっております。全国2000例以上に及ぶ腎臓病遺伝子解析、その技術から80本近い論文が創出されたこと、そして最近では蘇原映誠先生とともに産学連携プロジェクトの推進や、東京都大学事業提案に採択され大きく未来が開けたこと、などこの分野でトップレベルを走り続けることができたのは、あの時、准教授であられた先生がわざわざ三島までご一緒くださったことが全ての始まりであったと確信しており、このご恩を一生忘れる事はありません。

内田先生は、ご自身にも他人にも極めて厳しい方でした。その妥協なき姿勢やご判断を15年間間近で拝見し、時にはその厳しさに身の引き締まる思いをしながらも、医師として、研究者として、そして人として計り知れないご示唆をいただきましたことは私の人生にとってもかけがいの無い糧となりました。

長きにわたり世界第一線でご活躍され、大学および腎臓内科の運営においても信じがたいほどの敏腕を振るい、組織をここまで成長させてこられた先生の功績には、敬服の念に堪えません。

これからは、ご自身の時間も大切にされ、さらに豊かな人生を歩まれますよう、一後輩として心よりお祈り申し上げます。

本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

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