メッセージ

淺香 えみ子

あさか  えみこ

文京学院大学  客員教授

東京科学大学病院 前看護部長、日本看護協会常任理事

内田信一先生のご退官に寄せて

2020年4月1日、看護部長就任は新型コロナ感染症対応の中で予想外な船出となりましたが、すべての不安は胸の中にしまい込み、自分で限界をつくらず「できないではなく、どうしたらできるかを考えよう」と自身の方針を決めた日でした。初めての仕事は新型コロナ感染症対応の会議で、そこで内田病院長にお会いしました。ここから始まる長い戦いは組織管理の教科書を書き上げられる程の経験となりました。最大の課題は組織文化である職員の想いを組織運営方針に導くことであったと振り返ります。

コロナ対応の混乱の中で難しい課題も多くあり、残した課題もありましたが、内田病院長のご配慮、受け止め、ご理解の中で、看護管理者として自信をもって終えることができました。ほぼ全員が初めましての中で、私の置かれている状況を一番知って頂いていたと思います。この信頼感は私が看護部の中で、「(内田)病院長に伝えてあるから大丈夫」「病院長に相談してくる」と何度となく発したことで、周囲にも感じられていたと思います。

他の施設でできることが何故(医科歯科で)できないのか?と考えた時に「うちの看護師さんはそれが嫌なんだよ、きっと」と見立てを伝えられてことがありました。事には必ず理由があり、受け入れてもらうには納得が必要であるというシンプルですが大事な戦略を早い時期に学ばせて頂きました。「嫌」をねじ伏せたり、どちらかが折れるのではなく組織と職員が折り合いをつけるという工程が繰り返し続けられていました。最後には「嫌」は放置されることなく納得に向かわせる役割を内田病院長の周りは理解していたと思います。

折り合い付けの過程では、職員への説明の役割があり、コロナ病棟機能転換の病棟説明に同行をご依頼したことがありました。誰もが納得に十分な情報がない中で、職員の不安や不満を受け止めることが目的であり サンドバックになってもそこに行くこと、現場の思いを受け取ることしかできない時でした。内田病院長の静かに落ち着いた声の説明は私が繰り返す各部署の説明とは異なり現場に届いていくことを肌で感じました。トップの管理者が現場に行くことの意味、タイミングを教えて頂きました。そこには、管理者が現場に足を運ぶことの有用性は周知のことですが、組織機能として現場に行かずとも担当者を尊重し、任せきり、報告を信頼することが必要であるというお考えがありました。だからこそ、頑張りたいと、私も多くの職員も思いました。現場に赴く少ない機会でそこにある本質を感じ取ること、見極められることの方がいかに難しくトップの力量が試されることを感じました。私もこのような器になり、ここぞという時に時期を逸せず力を出せるようになりたいと感じた機会でした。

医科/歯科病院統合、科学大への統合は大きな組織文化の改革であり、未曾有の経営問題と共に向き合うという難しい舵取りに取り組まれ、新しい時代へと繋いだバトンは必ず未来にむけ力強く機能していくものと思います。5年10年の節目にお会いして「あの時は実はね〜」とお話ができることが私の希望です。それまで東京科学大学病院を気にかけて頂きつつも多くの重荷を下ろして頂き、セカンドステージの充実をご祈念申し上げます。

これまでのご貢献、ご指導に深く感謝を申し上げ、新たな門出のお祝いを申し上げます。

戦友 理事/病院長 内田先生へ

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